これまで金融サービスは、銀行、クレジットカード会社、保険会社など、私たちが通常金融機関と考える企業によって提供されてきた。しかし、エンベディッド・ファイナンス(組み込み型金融サービス)のおかげで、金融機関以外の企業が金融サービスのディストリビューターになることがますます一般的になってきている。(組み込み型金融という概念については、本連載の他の部分にもつながるこちらの記事で詳しく述べている)。今回は、保険商品が他のサービスにどのように組み込まれつつあるかに焦点を当てる。
Card-as-a-Serviceのブログ記事で取り上げたのと同様、保険会社が航空会社などのパートナーを通じて保険商品を販売するというアイデアは以前から存在していた。
インターネットの出現と個人用コンピューターの普及に伴い、ガイドワイヤーやダック・クリークのような保険革新企業が20年前に出現した。最近では、Tractable、Concirrus、Shift TechnologyといったInsurTechの新興企業が、AIやビッグデータを保険業界に応用し始めている。
しかし、COVID以降、アーリーステージのInsurTechイネイブラーの数と、それらに投資される資金量が大幅に増加している。また、B2CのInsurTech企業の中には、自社独自のテクノロジーを、他社が自社の保険を提供するためのエンド・ツー・エンドのSaaSソリューションにスピンアウトした企業もある。その一例がバイマイルズで、カスタマイズ可能な利用ベースの保険プラットフォーム、バイビッツをスピンアウトしている。
組み込み型保険の種類
保険商品の提供には、さまざまなレイヤーの仕事が含まれる。以下に、保険イネイブラー(Insurance Enabler)がどのような切り口で保険商品を提供しているかを紹介する:
1. デジタル化と自動化: デジタル化と自動化:フロント・オフィス、保険契約やプランの管理、クレーム管理などのプロセス改善に焦点を当てた効率化ツール。
2. データとテクノロジー AIやブロックチェーン技術を活用し、特定のユースケースやバリューチェーン全体のデータを取得・分析するデータ分析サービス。
3. フルスタック: 保険商品を発売するための完全なデジタル保険インフラを提供する新興企業。B2B2CまたはB2B2B指向で、通常は独自の保険引受・販売ライセンスを持っている。
主要プレイヤー
Wefox: 2015年に設立され、SBI、Target Global、Horizons Ventures、Salesforce Venturesなどの投資家から9億米ドル以上の資金を調達している。リヒテンシュタインで認可されたフルスタックの保険会社として、Wefoxは他の欧州諸国にライセンスをパスポートすることができる。しかし、同社は自ら保険を販売するのではなく、700の現地代理店と5000の提携ブローカーを通じて保険を販売している。これらの代理店やブローカーの仕事は、革新的な保険商品を販売するだけでなく、Wefoxが開発した高度にデジタル化・自動化された販売ツールを使用することもできる。
ELEMENT: Solarisbankというバンキング・アズ・ア・サービス企業も成功させたFinleapによって2017年にインキュベートされたELEMENTは、7500万米ドル以上のVC資金を調達している。ELEMENTはフルスタックの保険プロバイダーでもあるが、B2B2xモデルに厳格にこだわっている。例えば、不動産会社が自社ブランドの家財保険や賠償責任保険を提供できるようにした。また、フォルクスワーゲンの自動車保険や、旅行保険、サイバーセキュリティ保険などのホワイトラベル保険も提供している。
Finatext: 2014年に設立された、日本では数少ないInsurance-as-a-Service企業である。他の組み込み型金融サービスの中でも、Finatextは「Inspire」を提供している。InspireはSaaS型の統合システムで、従来の保険会社と他社をつなぐことができ、他社も保険商品を販売することができる。これは、顧客が保険の申し込み、契約管理、支払い請求を行うためのユーザーフレンドリーなUIを提供するものである。一方、保険会社や代理店には、アカウント、連絡先、顧客からのクレームを管理するシステム・コンソールを提供する。
Akur8:AIを活用した保険プライシングの自動化と最適化を保険会社に提供することを目的とした、AIを活用した保険プライシング・プラットフォームの開発会社。同社のプラットフォームは、保険プライシングに特化した最先端のアルゴリズムと統合されており、異常を即座に発見し、新たなパターンを発見することができる。これにより、従来のソリューションよりも10倍速くモデルを構築することができ、保険会社は、数ヶ月ではなく数時間でプライシングモデルを作成・更新することで、利益を改善し、市場シェアを獲得することができる。
DynaRisk:個人のリスク要因を外部データやアルゴリズムと組み合わせ、オンラインで個人のリスクレベルを判定する。
Unqork:保険アプリを含む複雑なアプリケーションの構築、デプロイ、管理を支援するノーコードのエンタープライズ・アプリケーション・プラットフォーム。
Instanda:保険会社がオンラインで商品を構築、設定、発売できるSaaS型保険ソフトウェア・プラットフォーム。
Cytora:商業保険のアンダーライティングを変革するサービス。Cytora Risk Engineは、人工知能を使用してリスクのパターンを長期的に学習し、保険会社がより効率的に引受を行い、顧客により公正な価格を提供することを可能にする。